免疫老化とは、加齢に伴い免疫力が低下していく現象を指します。免疫力は身体を病気から守るために欠かせない機能です。
免疫老化が起こると、病気の重症化やワクチンの効きが弱まるなど、健康寿命に悪影響を与えます。
そこで今回は、免疫老化とはなにか、その原因や長寿との関係について解説します。
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免疫老化とは
免疫老化とは、加齢に伴い免疫機能が低下する現象のことです。
加齢に伴い個体の免疫機能は、外来病原体に対する獲得免疫応答の低下(たとえばワクチン効率の低下)や過剰な炎症反応傾向などの特徴的な変化を示し、一般に「免疫老化」と呼ばれている。免疫老化は、加齢に伴うガンの増加への関与も示唆されている。(中略)つまり免疫老化は、これまで考えられてきたようなTリンパ球集団の全体的な機能劣化によるものではなく、PD-1陽性Tリンパ球の割合の増加によってもたらされると考えられる。
京都大学「免疫老化のメカニズムを解明しました」2009年9月8日より
また免疫老化が起こると、特に体の免疫応答を司るT細胞が顕著に減少します。
すると感染症にかかりやすくなったり、回復が遅い、ガンや自己免疫疾患を発症しやすくなる、ワクチンや抗生物質の機器が悪くなるなどの悪影響を及ぼします。
免疫老化を防ぐことは、健康寿命を延ばすために重要なポイントといえるでしょう。
免疫とは
そもそも免疫とは、誰にでも備わっている外敵から身体を守るための生体防御機能です。
「免疫」とは、細菌やウイルスなどの微生物、あるいは「異物」とよばれる自分の体には元々ないもの(非自己)から、自分たちの体(自己)を守るしくみです。
健康長寿ネット「免疫系の老化」より
なお年齢を重ねると、健康であっても少なからず免疫力は低下していきます。
この免疫力低下には個人差があるため、できるだけ免疫老化を防ぐことが大切です。
免疫老化の原因
直接免疫老化を進行させる原因は加齢です。免疫細胞であるT細胞を生み出す胸腺が萎縮し、体を守ったり、新たに免疫を獲得することが難しくなります。
実際に日本老年医学会でも、高齢者の死因のトップは免疫の低下による感染症であることが示唆されています。
東京都老人医療センターにおける剖検例によると,60歳以上の老人の第1の死因は感染症で,40%近くを占める。
また百寿者の死因について見ると感染症が66%になると報告されている。
こうした事実は生体防御の中核をなす免疫系が,老人になると著明に低下することを示している。
日本老年医学会雑誌40巻6号 「老化と免疫」廣 川勝昱より抜粋
実際に獲得免疫のピークは20代で、それを過ぎると急激に萎縮し40〜50代以降の免疫力は半分以下、70代では10%に低下する人もいます。
また、白血病やガンなどの慢性的な炎症反応を起こす病気になると免疫老化が加速することもわかっています。
免疫老化を引き起こすストレス
免疫力の自然な低下に加えて、ストレスが加わることでさらに免疫力が低下します。
慢性的なストレスは自律神経を乱し、コルチゾールというホルモン分泌により免疫機能を抑制してしまうのです。すると体内の炎症反応が増加し、免疫老化を加速させます。
つまり免疫老化にとってストレスは大敵です。健康寿命を延ばすにはまずストレスのない生活を心がける必要があるといえます。
ご長寿さんは特殊な免疫細胞を持っている?
実は理化学研究所と慶應義塾大学医学部の調査によると、110歳に到達した超長寿者(スーパーセンチナリアン)は高い免疫力を維持していることがわかりました。
通常は少量しか存在しないCD4陽性キラーT細胞(免疫細胞)を高い割合で保有していたのです。
共同研究グループは、110歳に到達した超長寿者であるスーパーセンチナリアン7人と50~80歳の5人から直接採血を行い、血液中に流れる免疫細胞を1細胞レベルで解析しました。
その結果、スーパーセンチナリアンでは、免疫システムの司令塔の役割を果たすT細胞の構成が50~80歳と比べて大きく変化していることが分かりました。
なかでも、通常は少量しか存在しないCD4陽性キラーT細胞が高い割合で存在していました。
理化学研究所 慶應義塾大学医学部「110歳以上の超長寿者が持つ特殊なT細胞」より
この結果から、健康寿命を延ばすには免疫力が大きく関わっていることがわかります。
スーパーセンチナリアンとは
スーパーセンチナリアンとは、110歳以上の超長寿者のことです。
日本国内には約150人しかおらず、100歳でも健康で自立した生活を送る方が多いことから「健康長寿のエリート」とも呼ばれています。
スーパーセンチナリアンと免疫力の関係性は、健康寿命を延ばすための新たなアプローチとして注目を集めています。
免疫老化を防ぐためのポイント
最後に、免疫老化を防ぐために心がけたいポイントを押さえておきましょう。
ストレスをためない
ストレスが慢性化すると免疫力が低下することがわかっています。
副交感神経が優位になり血流が悪化するだけでなく、免疫を抑制するホルモンが分泌されるためです。
免疫力を回復させるためには「よく笑う」ことを心がけましょう。
笑うとリラックス効果や血流促進になるうえ、ガン細胞を死滅させるNK細胞も活性化されます。
腸内環境を整える
食べ過ぎや利用の偏った食事を続けていると、腸内環境が悪化します。
すると消化機能が弱まるだけでなく、腸内フローラが乱れて免疫機能の低下につながるのです。
食べ過ぎをおさえ、できるだけ腸内環境を整える生活をするよう心がけましょう。
ビタミンCやビタミンEをとる
ビタミンCとビタミンEはどちらも免疫力を高める効果が期待できます。そのため、積極的に食事に取り入れるようにしましょう。
ビタミンCはブロッコリーやキウイ、いちごなどに多く含まれており、活性化酸素除去やウイルス感染を防ぐインターフェロンの分泌に関わっています。
また、ビタミンEはアーモンドや豆乳、かぼちゃなどに含まれており、抗酸化作用を高める働きをします。
バランスの良い食事は「まごわやさしい」の項目でもご紹介していますので参考になさってください。
適度な運動と睡眠
免疫力を維持するためには、適度に体を動かしてよく眠ることが重要です。
軽いエクササイズでも血流増加により免疫細胞が活性化します。
また、人間の身体は睡眠時に修復されるためしっかりと眠るようにしましょう。
免疫老化を防げば超長寿も夢じゃない?
健康寿命を延ばすためには、免疫老化を防ぐことが重要です。
超長寿者であるスーパーセンチナリアンを見習い、腸内環境など生活習慣を見直してみましょう。
健康寿命ポータルでは、免疫機能を向上させるさまざまな情報を発信しています。例えば、大声で歌うこともストレス軽減になり免疫力向上につながります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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