オートファジーとは、ギリシャ語で「自分を食べる」という意味です。
実は近年、長年謎だったオートファジーの原理が解明されつつあります。そして、このオートファジーは「不老」につながる研究として注目を集めているのです。
そこで本記事では、どのような仕組みで細胞が健康寿命を延ばしているのか、オートファジーのメカニズムから最新の研究動向まで、わかりやすく解説します。
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オートファジーのメカニズム
オートファジーとは、細胞が自分を分解しリサイクルする仕組みのことです。
細胞内にある老廃物やタンパク質・核酸などの組織などすべての物質を分解し、エネルギー源にしたり他の細胞の材料として再利用しています。
オートファジー(ギリシャ語で「オート」は「自分自身」、「ファジー(ファゲイン)」は「食べること」という意味)とは、生物が生命維持に必要なアミノ酸の生成などのために細胞内のタンパク質を分解して再利用する重要な機能で、「細胞内リサイクルシステム」とも呼ばれる。
首相官邸HP「オートファジー研究が開く医学の新境地」より
このようにオートファジーは、健康寿命を延ばす細胞の若返りに関係する仕組みとして注目を集めています。
オートファジーの役割
なぜ細胞が自分を分解しているのか、オートファジーの役割を3つみていきましょう。
飢餓状態でのエネルギー供給
オートファジーの最も原始的な役割は、細胞の分解によるエネルギー供給です。
どんな生き物も、飢餓が続くと死んでしまいます。そのため極限状態では自分自身を分解し、栄養源として活用できるようになっているのです。
実はオートファジーが最も活性化するのは、へその緒から切り離されて一時的に飢餓状態になった出生直後の新生児であることもわかっています。
細胞を健康に保つ
オートファジーにより正常な細胞だけでなく、老化した細胞や病気になった細胞をリサイクルします。すこしずつ細胞を新品に交換することで身体の健康を保っているのです。
例えば赤血球でいうと、わずか1秒で300万個の細胞が作られています。しかし、同時に同じ300万個の赤血球が壊されているのです。
37万兆以上とも言われる細胞は、このように常に新陳代謝を繰り返すことで健康を維持できています。
免疫機能
大阪大学の吉森保教授により、オートファジーは以下のような有害物質を優先して攻撃していることもわかりました。
- 病気の原因になる細菌やウイルス
- 活性酸素を出す穴の空いたミトコンドリア
- アルツハイマーやパーキンソン病の原因になる異常なタンパク質
このようにオートファジーは、細胞の健康を守るための免疫機能としての役割も果たしているのです。
オートファジー機能は加齢により低下する
オートファジーは年齢とともに働かなくなってきます。特に60代以降は急激に機能低下が起こることがわかってきました。
これは「ルビコン」というオートファジーを抑制するタンパク質が、60代以降異常に増殖するからです。
オートファジーが暴走すると細胞破壊が進み死んでしまうため、このルビコンによって働きが制御されていると考えられています。
このメカニズムは、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した東京工業大学の大隅良典博士らの研究グループによって発見されました。
ルビコンと不老の関係
大隅良典博士とともにオートファジーを研究している大阪大学の吉森保教授は、オートファジーを活性化させ、細胞を若々しく保つ方法を模索しています。
その研究の中で、ルビコンを制限した線虫の寿命が1.2倍に伸びたことが証明されました。
私は加齢で増えたルビコンの影響を確かめるために、遺伝子を抑制してルビコンを生まれつき持たない線虫を作って、観察してみました。その結果、寿命が1.2倍に伸びることが確認されました。
沢井製薬 SCIRNCE SHIFT「人類の夢「不老」を可能にする?オートファジーの機構解明」より
またポリグルタミン病という神経変性疾患にかかったショウジョウバエは、歳をとると元気をなくして動かなくなるのですが、ルビコン遺伝子を抑制すると、元気に動き回ることも確認できました。人間に例えれば、80歳になっても病気にかからず、フルマラソンを走れるぐらいに元気になったのです。
もしルビコンがなければオートファジーは制限されません。
オートファジーが働けば、細胞の新陳代謝は活性化し、免疫力向上やさまざまな病気の予防にもつながります。
そのため、寿命まで老いないで過ごせる可能性すら出てきたのです。
不老の秘薬はオートファジーにあり?
日本はオートファジー研究の先進国です。今後は更に研究が進み、人間の自己修復機能を高める薬が誕生するかもしれません。
健康寿命ポータルでは、健康維持に関わる様々な先進研究についてもご紹介しています。近年注目を集めているNMNや酪酸菌などの記事も、合わせてご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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